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@cubid_10411 が書いたなんかのレビュー

Dishonoerd review

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Dishonored」はArkane StudiosによるステルスアクションFPSだ。興味深いスチームパンクとファンタジーを掛け合わせたような世界観と、超能力を駆使するゲームプレイ、そして病的に完成度の高いレベルデザインが魅力だ。

 これほど「楽しい」ステルスはなかなかない

筆者はゲームにおけるステルス要素が大好物である。しかし、多くのステルスゲームが適度な緊張感とちょっとしためんどくささを感じながら敵をやり過ごし、気づかれずに目的を達成することで満足感を得るように設計されている。そんなステルスゲームだってもちろん楽しいが、「Dishonored」のステルスプレイは一味違う。
主人公「コルヴォ・アッターノ」は右手の武器以外に左手で超能力を扱うことができ、この超能力には、一瞬で離れた場所に移動できる「ブリンク」や、ネズミに乗り移って操作できる「ポゼッション」、時を止める「ベンドタイム」などがあり、これらを駆使して敵地に潜入していくことになる。こような左手に超常能力をもってファンタジーな世界観を探索する「ストーリー主導型FPSスタイルRPG」は、まさしく「System Shock」や「Thief」から始まり(ほかにもたくさんあるけど)、「BioShock」で昇華した同様のゲームジャンルを踏襲しており、「Dishonerd」がこれら偉大なゲームのフォロワーだということはすぐにわかる。(そもそもArkane Studiosは BioShock2の開発に携わったこともある。)しかし「Dishonored」はただのフォローゲームではない。本作のステルスプレイの舞台となるマップ、つまりはレベルの素晴らしい完成度と、前述の超能力によって「Dishonored」のステルスプレイは唯一無二の楽しさを提供してくれる。
本作のマップはいわゆる箱庭型であり、スタート地点からゴールまでの道端をどのようにいくか、プレイヤーが自由に判断することができる。そしてそのマップは実際に、とても広く、そして複雑だ。例をあげて紹介してみよう。例えば、目的地までまっすぐ伸びた大通りには検問があり、多くの警備兵が監視している。大通りから逸れた裏路地には監視の目は少ないが、そこに何があるのかは未知数だ。さて、プレイヤーはどうにか監視の目を潜り抜けて検問装置のそばまで行き、装置をこっそり解除してもいい。それか裏路地をとことん探索して、検問の裏側に出る小道がないか探すのもいいかもしれない。あるいは住民を助けることで、家の中を通りぬけさせてくれるかも。もちろん、警備兵に正面から勝負を仕掛けて皆殺しにしてもいい。超能力を最大限駆使して努力すれば…できるだろう。そのような、攻略の大筋を決める選択肢の多様さが「Dishonerd」にはこれでもかと詰まっている。それに加え、局所的なステルスプレイにも多彩な「遊び」がある。おっと、どうやら通りの向こうから警備兵の一団が歩いてくる。どうしようか?あたりを見渡すと、相手の視線から外れる場所…2階のベランダや街頭を見つけることができるだろう。そこにブリンクで飛び移り、相手の頭上からどう料理するか悩んでみてもいい、もしくは近くのネズミに「ポゼッション」で乗り移り、排水溝に隠れることもできる。「ベンドタイム」で時を止め、3人全員の頭にクロスボウを打ち込んでから解除すれば、まるで映画のような一幕を作ることができる。本作のマップは入念なレベルデザインと超能力によって、恐ろしい警備兵が跋扈する空間から「遊びのサンドボックス」へとたちまち変化する。そんなゲームデザインの弊害として、本作は難易度がハードであっても比較的簡単だ。大勢の警備兵に襲われても、一つの超能力の発動でたちまち姿をくらますことができる。しかし、それでもかまわないと感じるのは、これほど「楽しい」が連続するステルスゲームのデザインはほかに見たことがないからだ。

世界観はとても興味深い

本作の世界観はヴィクトリア朝時代のような様式をもった町、「ダンウォール」を舞台とし、この町はスチームパンク的技術によって発展しているらしい、そこで主人公は超常的な存在から魔法の力を譲り受けることになる。このようなスチームパンク×ファンタジーな世界観と設定はかなり人を選ぶ気がしないでもないが、個人的には結構気に入った。しかし、本作のビジュアル面でのプレゼンスは設定というよりも、そのグラフィックだろう。グラフィックはすべて独特の油絵のような質感でレンダリングされており、ヴィクトリア様式の建築と煙たい空気感と合わさって絵画のように写ることもある。前述の優れたレベルデザインを構築するグラフィックも見事で、侵入できる家屋は世界観独特の生活感にあふれ、探索意欲を刺激してくれる。

ストーリーと演出はマイナスポイントとなる

ここまで、本作のゲームプレイについてべた褒めしてきた。それに対して本作のストーリーはどうかというと、まあ大したものではない。謎の策略によって女王が暗殺され、国を追われた王室護衛官「コルヴォ」は、国を取り戻すために幼い女王を守り、敵性勢力を暗殺していく。といったストーリーだが、すべてのストーリーを通してなんの感動も湧いてこないというのが正直なところだ。カットシーンなどの演出も相当に淡白であるし、ミッションの合間に挟まれるブリーフィングも淡々として退屈だ。NPCと会話することもできるが、ぎこちなく口をパクパクさせるキャラクターを真正面から眺めるのが苦痛になることもある。世界観が興味深いだけに、ストーリーラインが退屈なのは残念だ。

 

Dishonored」におけるステルスプレイは、それだけでゲームジャンルにおける新たなスタンダートとして輝くものがあり、それは探索意欲を刺激する魅力的なグラフィックに下支えされている。しかし本作を名作と呼べないのは、あまりに退屈なストーリーラインが世界観とのバランスを壊してしまい、これが没入感を削ぐ原因となっているからだ。

VERDICT 7.8