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@cubid_10411 が書いたなんかのレビュー

Hyper Light Drifter review

f:id:taichifurukawa:20171222153752j:plain 「Hyper Light Drifter」はHeart machineによる2DアクションRPGで、ハードで困難なゲームプレイと、プレイの合間に挿入される美しいドットベースの世界が魅力のインディーズゲームだ。

これは完成度の高い「死にゲー」だ。

本作は見下ろし視点で描かれる2Dアクションだ。プレイヤーはその独特な、美しい世界を歩き回り、探索し、そして立ちはだかる敵をその剣と銃で打倒していかなければならない。

断言するが、本作を一度も死なずにクリアすることは不可能だ。プレイヤーが生き残れるのは「正しい操作」をしたからであって、防御力が高いからだとか、体力が多かったからという理由で生き残ることはない。本作にレベルやステータスは無く、プレイヤーの腕前がレベルなのだ。「正しい操作」に求められるのは知識と経験、そして反射神経。否応にもプレイヤーは、「ドリフター」としての適性を磨いていくことになる…生き残るために。

プレイヤーが行えるのは剣を用いて連続で切りつける攻撃と、トップダウンシューターのような操作感で扱う銃、そして素早いダッシュが可能だ。フィールドは狭く、逃げ場がなく、敵は大量に湧き出してくる。そのため、プレイヤーは素早い判断力で敵の攻撃をかいくぐり、僅かな隙をついて攻撃することが求められる。 こう書くと、本作のアクションは -こちらのほうが出自が先ではあるがー ポーランド発のインディーズゲーム、「RUINER」と非常に似通っている。「RUINER」や、「Hotline Miami」が気に入った方には本作のアクションも最大限楽しめるだろう。ただこれらの作品と大きな違いは、本作はトップダウンシューターではなく、より剣戟アクションに重きをおいている。

敵の攻撃には、いわゆる「タメ」があり、これを見切ることができればダッシュで避け、隙を生み出すことが出来る。敵の動作をつぶさに観察していくことで、たとえ膨大な数の敵に囲まれてもまったく怯むことなく立ち向かっていける。一瞬の判断ミスが命取りになる状況で、敵の猛攻を返り討ちにできたときの達成感は言葉にできないものがある。時に強力なボス戦や、大型の敵にヒットアンドアウェイで戦っていく様はまるで2D版「Bloodborne」だ。 そう、本作のアクションについて考えるほど、ほかのゲームとの類似点が浮かんでくる。結局のところ本作は「死にゲー」としての一番おいしい部分…強力で個性的なボス、油断できない雑魚敵たち、死にやすい難易度設定と素早い復帰。そして困難をトライアンドエラーで乗り越えていく達成感。これらの要素を煮詰めてこしとり、ピュアな「 死にゲー 」に仕立てている。少々オリジナリティに欠けるかもしれないが、相当に楽しいことは間違いない。

見るものを立ち止まらせるビジュアルと世界観

ではゲームとしての「報酬」はなんなのか?プレイヤーを前進させる原動力は?。事実、本作は硬派なだけのアクションゲームではない。 本作の謎めいた世界観とストーリーに、このレビューで長々と言及することは避けるが、ゲームを始めてすぐ始まるオープニングムービーにおける不思議な象徴たち…ジブリのような巨神兵による過去の戦争の示唆や、影のようなクリーチャー、東西南北を指し示す正方形のアーティファクト。これらの要素はしっかりとプレイヤーの好奇心を煽ってくれる。そしてムービーの後、シームレスに以下のような情景に切り替わる。 f:id:taichifurukawa:20171222153755j:plain これほどの奥行き感と立体感を併せ持ったドットアートはなかなか見られないだろう。ドットベースで描かれるインディーズゲームとして、同様に高評価を得た「Owlboy」とも全く引けをとらない。このような美しく、退廃的な情景はプレイヤーが行く先々で目にすることになる。時にはこれから向かうダンジョンの様子を示唆するように、時には過去の戦争を示唆するように。本作におけるビジュアルは世界観と完全に調和し、言葉のないストーリーテリングとしてプレイヤーの確かなモチベーションになっている。

重要なのは、本作がこのような美しいアートを過剰に多用しないということだ。敵と戦い始めるアクションパートでこのような奥行き感のあるアートが背景では、場面がごちゃついてしまうだろう。 アクションパートでは意図的に立体感の少ない、シンプルなマップになっていることが多い。これはプレイヤーをその高難易度な「死にゲー」に集中させる意図が大きいが、多くの場合、その困難を乗り越えた先に壮大な情景が広がっている。このようなビジュアル面でのテンポの良さは本作の強烈な個性だ。

「Hyper Light Drifter」における高難易度のアクションは、「死にゲー」を定義した偉大なる先人たち…「Demon’s souls」、「Bloodborne」、「Hotline Miami」らへの熱烈なラブレターだ。オリジナリティは感じないかもしれないが、結果として、本作は操作と入力の喜びをプレイヤーにもう一度感じさせてくれる。そして同時に、近年において稀なその美しいドットベースのビジュアルはプレイヤーの確かな原動力として動作する。この手のアクションゲームが大好物な筆者にとって、2017年における傑作の一つとして挙げれる作品だ。

VERDICT 9.0