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@cubid_10411 が書いたなんかのレビュー

NieR Automata review

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「NieR Automata」はプラチナゲームス製のアクションゲームだ.とてもたくさんの素晴らしい要素を持っているが,「もしも」がないわけではない.

 

至高のアクションと爽快さ

「NieR Automata」はプラチナ製のアクションゲームとして,そのアクション部分の完成度は眼を見張るものがある.プレイアブルキャラクターの2BやA2を用いて剣や槍,時には徒手空拳を用いて敵をぶち壊しまくるのはとっても快感だし,超人的に激しく,美しいキャラクターモーションはとても丁寧に作られており,操作するのが本当に楽しくなっている.2Bに付随するボットから必殺技を繰り出したり,ジャスト回避をするたびにヒットストップが発生し,半端ではない爽快感を味わえる.それでいてけして簡単なゲームプレイにはなっておらず,敵の攻撃力は高く,いかに回避し,攻撃していくかの判断が求められ,多数の敵に囲まれた際には少しの油断でも命取りになりかねない.確かなアクションの戦略性と操作性,そして美しいモーションとヒットストップによる演出によって彩られた「NieR Automata」のアクションはこのゲームの楽しさの本質だろう.
チップを利用したシステムもユニークさと工夫の楽しさが光る.プレイヤーはアンドロイドたちの機能を拡張する「チップ」を集めて強化していく.チップには単に体力や攻撃力を上げたりするのもあれば,攻撃に衝撃波を加えたり,特定タイミングでスローになったりと特徴的なものもあり,自由に組み替えることができる.さらに面白いのは体力バーやダメージ表示,基本的なHUBなどもこのチップとして管理でき,不要であれば外して他のチップを入れるためのエリアとして使うことができる.アンドロイドのOSチップ自体も外すことができるため,うっかり外すとゲームオーバーとなる.このようなキャラクターの設定と演出的にリンクしたゲームシステムの要素はチップ以外にも随所に見られ,ゲームプレイと同時に世界観を感じる工夫になっている.

独特かつ魅力的なキャラクターと世界観

「NieR」をプレイするのは初めてだったが,その世界観とキャラクターの魅力を確認することができた.プレイアブルキャラクターの2Bはしっかりカワイイし,他のプレイアブルキャラやNPCたちのデザインも独特でありながら物語を通して愛着が湧いてくる.世界観の設定も同様に興味深く,宇宙空間から戦闘に赴くアンドロイドという設定や,やたらと可愛らしいエネミーたち含め,唯一無二のもだと感じる.人間に作られたと自覚するアンドロイドが,機械生命体を「心がない」などと皮肉る様子はまさしく違和感の塊で,そのような強烈な皮肉を感じながらプレイするのも面白い仕掛けだ.

多くの「もしも」がこのゲームの汚点だ

このゲームは素晴らしい完成度のアクションの合間にゲームジャンルの変更が行われ,その変更先は多くの場合シューティングゲームで,はっきり言ってこれは興醒めだ.どうやらゲームジャンルの変更は「NieR」の持ち味であり,3Dアクションが時に横スクロールプラットフォーマーに変わったり,ビジュアルノベルになったりする.これらのジャンル変更は比較的うまく動作しており,ゲームプレイのアクセントとして十分楽しめる内容だ.しかしシューティングはあまりにも多すぎる.初めに触れておくが,筆者はシューティングはどちらかというと好きなジャンルで,親の仇のようにシューティングが嫌いなわけではない.このゲームにおけるシューティングは大きく2パターンある.物語の合間合間にプレイヤーは飛行ユニットと呼ばれるロボットに乗り込み,シューティングゲームを遊ぶことになる.この際には横,縦,ツインスティックと3パターンのシューティングが楽しめるが,実際のところ近接武器を振り回していればクリアできる仕様になっており,結果的にシューティングとしてのプレゼンスが殆どない.アクションが魅力的なだけに,「早く終わらせて地上に戻りたい」と念じながらボタンを連打する羽目になる.その上このシューティングは比較的物語の重要な場面であったり,大迫力の大型ボスとの戦いで挿入されるため,ここが「もしも」3Dアクションで行うボスバトルであったらと思わずにはいられない.
もう一つは9Sというプレイアブルキャラクタで可能になるハッキングで,これを行うことで敵に大ダメージを与えることができたり,戦闘を有利に進められる他,ストーリーとの関連でアンドロイドをハッキングするような演出上,自動的にこれを行うシーンも多い.ハッキング行うと,単純なポリゴンで表現されたツインスティックシューターに移行し,これもゲームプレイとしてのプレゼンスは殆どない.単純に退屈であるのに加え,ストーリと戦闘を合わせ何十回も行わなければならず,興ざめでしかない.
本作のミステリアスなストーリーは十分に完成度が高く,プレイに挿入されるカットシーンや,演出のレベルも高い.しかし,本作のストーリーテリングにも「もしも」は存在する.物語の最中,9Sはとある理由で自暴自棄となり,「全部ぶっ壊してしまえ」状態に陥ってしまう.ストーリーとしてそのような展開になるのは十分納得できるものだが,勿論プレイヤー自身は「冷静になれよ」と思うし,このようにプレイヤーの共感から完全に浮いてしまったキャラクターを何時間も操作させるストーリーテリングには懐疑的にならざるを得ない.

欠点を多く上げたように思えるが,本作が素晴らしいアクションゲームであることに疑いの余地はない.オープンワールド設計にぎこちなさは感じるものの,多くの魅力的なサブクエストやアンロック要素をこなしていくのは楽しいし,ストーリーも魅力的でボリューム満点だ.いいゲームであることは確かだが,多くの「もしも」から目を背けることは残念ながらできない.

 

VERDICT 7.9